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闇への誘い


『…………!!』
 下の魔竜の間にて…ドーガが連れて来た5人とにらみ合っていた魔竜達の間に動揺が走る。
「なんだ?どうした?」
 魔竜達の様子にデッシュが首を傾げると、黒竜が上を見上げ咆哮を上げた。
同時に魔竜達は姿を消して行き、残った黒竜は5人に視線を向ける。
『……あいつが死んだ以上…お前達と戦う理由は無い。』
 その言葉を残し黒竜も姿を消し、5人は顔を見合わせた。
「行って見ましょう!彼らが…ザンデを倒したのよ!」
 サラの言葉に5人は笑みを浮かべ頷きあった。

 ロトは頬に流れた涙を拭い立ち上がると空を見上げた。
塔から放たれた光が薄れ、空は再び暗い雲に覆われ始める。
「どうした、ロト?」
 アムルが問いかけると、ロトは不安げに首を振る。
「…さっきの戦いの中で聞こえた声…。あれは一体…。」
 その時だった。
突如、正面にあった柱の間の空間に一筋の暗い光が走る。
それはまるで扉が開くかのように漆黒の門が口を開き、そこから禍々しい黒い雲が溢れ出した。
それは一瞬で屋上を包み込み4人は驚き周囲を見回す。そこで、雲の中に浮かび上がった人影に4人は身構えた。
「誰だ!?」
 アムルが声を上げると雲の中から白髪の妖艶な女性が姿を現した。
「わしは全てを無に還すためにやって来た暗闇の雲…。」
 邪霊をまとい宙に浮くその姿にユリアスは言いようの無い不快感を感じ眉をひそめる。
まるで掴み所のないような…その名の通り雲のような存在。
「全てを闇で包み…そして、光も闇も無へ還す。まずは光の力を持つお前達をこの世界から消す…闇に溶けるがいい!」
 その言葉と同時に暗闇の雲は胸の前で両手を近づけ、その間に魔力が集中し始める。
それは急激に圧縮され巨大な魔力の帯となって放たれた。
膨大な質量を持つ魔力の奔流にユリアスとユリディナは残った魔力を振り絞り魔法障壁を維持する。
放たれた魔力が過ぎ去った時、目の前に暗闇の雲が姿を現し腕を振り払うと衝撃波が4人を吹き飛ばし地面に叩きつけた。
「…なんと脆い…。」
 地面に叩きつけられた4人を一瞥し、暗闇の雲は宙へと舞い上がる。
「なんて…力だ…。」
 アムルは身体を起そうとするが、そこで込み上げてきた血を吐き出す。
ロトは剣を支えに立ち上がり上を見上げると、そこで再び魔力を紡ぎ上げた暗闇の雲の姿を見え、次の瞬間、再び4人は魔力の奔流に飲み込まれた。
辺りが静寂を包み込む。
そんな中、ロトが咳込むと目の前に暗闇の雲が舞い降りた。
「ほう…まだ1人生きておったか。」
 その声に身体を起すと暗闇の雲はおもしろそうにロトの顎に手を当てる。
「…希望も絶望も、わしの糧だ…。」
 そして、暗闇の雲はロトの喉を掻き切った。
ロトが床に倒れ血が広がっていく様を眺め暗闇の雲は静かに笑みを浮かべると、現れた時と同じ様に周囲を囲む暗雲の中へ姿を消していく。
“…死ぬ…のか…?私は…何一つ…伝えられず…。”
次第に全身の感覚が失われていく中、ロトの脳裏にサラの姿が浮かび、そこで彼の意識は闇へと引きずり込まれた。

 その頃、屋上へ向かうため螺旋階段を登ってきたサラは思わず足を止めた。
「どうした?姫さん?」
 前を歩いていたデッシュが首を傾げるとサラは不安げに屋上へ続く階段を見た。
「とても…嫌な感じがするのです…。急ぎましょう!」
 そう言ってサラは走り出し、他の4人も顔を見合わせるとその後に続いた。
外は既に日が落ち周囲は暗闇に包まれていた。
「…真っ暗で…何も見えませんね…。」
 アルスが呟き辺りを見回す。黙って先に進んだサラは暗闇の中、僅かに周囲のクリスタルから反射する月光の中で床に落ちた剣に気が付いた。
それに近づき、そこでその先に倒れていた人影に思わず立ち尽くす。
「…ロト…?」
「どうした?何かみつけ…。」
 そこで他の4人も周囲の様子に気が付く。
「…うそ…うそよ…っ」
 呆然と呟き、サラは倒れた人影に駆け寄り抱き起こした。
まだ暖かさの残る顔を撫で、息をしていないその様子にサラの瞳から大粒の涙が溢れ出す。
「ねえ…お願い…目を開けて…ロトっ…。」
 サラは泣きじゃくりロトの身体を抱きしめる。
「畜生!冗談だろ!?」
 デッシュもユリアスを見つけ抱き起こし周りを見回すと、アルスやシドとじいさんもアムルとユリディナを見つけ駆け寄った所だった。
「返事しろよ…笑えねぇぞ!こんな…こんな事…!!」
 デッシュがやり場の無い怒りに拳で床を殴りつけた。
誰もが言葉を失い、ただサラの泣きじゃくる声だけが聞こえる中、周囲を淡い光が包み込んだ。
それに5人が正面にあった柱の方へ目を向けると、そこにドーガとウネが姿を現す。
『光の戦士達よ…目を覚ましなさい。』
『今一度、目を覚まし…この世界に光を…。お前達に私達の力を与えよう。』
 その言葉と共に2人は手を差し出し、分かたれた輝きが4人を包み込みその身体へと消えて行く。
すると、4人の顔に血の気が戻りゆっくりと呼吸を始める。
「…あれ…?シド…おじいさん…。」
「おおっ目を覚ましたか!」
「よかった!よかった!」
 ぼんやりと目を覚ましたユリディナにシドとじいさんが安堵し声をかける。
「アムル!!」
 続いて身体を起したアムルにアルスが飛びつき、アムルは状況が飲み込めずに頭をかく。
ユリアスが目を覚ました所でデッシュが肩に腕をまわすと、ユリアスは呆然と自分の手を見つめる。
「生きて…いるのか…?」
 ポツリと呟き周囲を見回すと、ロトの顔を撫でているサラの姿に視線を止める。
それに気が付き、その場にいる全員がサラの方を見ると、サラは黙って笑みを浮かべて頷いた。
ロトは頬に落ちた涙に小さく声を上げた。
「…サ…ラ…?」
「良かった…ロト…。」
 ロトは首に手を当てつつ起き上がる。
「傷が…確かに…暗闇の雲に…。」
「あの2人のおかげだ。」
 デッシュがそう言って指差す先を見た4人に、ドーガとウネは優しく微笑んだ。
『さあ、まだやらないといけない事があるよ!』
 ウネはそう言って手を鳴らし、ドーガが頷く。
『ザンデの過ちにより光の力が弱まった。そして、闇の力が増し…それが虚無の化身を生み出した。』
『…ザンデはその力に操られた…。』
 そこで、ドーガとウネの姿が遠ざかり始める。
「行ってしまうの…?」
 慌ててユリディナが声をかけると、ウネは頷いた。
『私達はもうすぐ大いなる意志と一つになる。行かなくてはならないんだよ。もう…助けてやる事はできない…。』
『お前達だけが光と闇の調和を取り戻せる。行くのだ。闇の世界へ。』
 その言葉を最後に2人は笑みを見せ背を向けるとその姿が消えて行き、その後に異空の門が開かれた。
それにロトは立ち上がると空を見上げる。
「…闇の世界へ行かなければ…。」
 その言葉に他の3人も歩み寄る。
アムルが拳をあわせて気合を居れ、ユリディナは深呼吸をする。
「私達がやらなきゃ…だね。」
 それにユリアスも黙って頷き、ロトは振り返った。
すると、後ろに居た5人も笑って頷く。
その姿に笑みで答え、ロトは目の前に開く異空の門を見上げた。
「行こう。闇の世界へ!」
 その声と共に4人は異空の門へと足を踏み入れた。


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