シルクスの塔に足を踏み入れた4人は、クリスタルで作られたその内部に圧倒される。
広いエントランスホールを進み、まずは正面にある扉を開く。
そこは奥に鏡だけがある小部屋になっており、鏡の前に4人が立つと鏡は光を放つ。
『この先は禁断の武器を封印した禁断の地エウレカへの扉なり…。
命惜しくば立ち去られよ。命を賭して力を求めし者よ、鍵を掲げ証を見せよ…。』
その声にロトはドーガから託された紫水晶…エウレカの鍵を差し出す。
すると、鏡に波紋が広がり門が開かれた。
それにロトが振り返ると3人は黙って頷き、ロトが門に手を触れると眩い光が部屋を包み込んだ。
異空に存在しシルクスの地下に繋がる禁断の地エウレカ。
遥か昔に封印されたその地には、あまりにも強大過ぎて人々が扱いきれなかった武器や魔法が封印された地。
どこまでも地下へ降りて行く途中に祭壇があり、そこに禁断の武器が安置されていた。
武器を扱える技量があるのか…武器を守護する者達と戦い力を示す。
その途中、アムルの持つ魔剣の片割れもそこに安置されていた。
他の武器と同じ様に守護していた者を倒し、アムルは魔剣を祭壇に浮かぶ魔剣の片割れの前へ差し出す。すると、祭壇に浮かぶ片割れは暗い紫光を放ち魔剣へと吸い込まれて行った。
「…!?」
そこで魔剣から流れ込む今までに無い暗く圧し掛かるような力に、アムルは思わず座り込んだ。
「アムル!?」
ロトが慌てて声をかけると、アムルは苦笑しつつ息を整える。
「…すげぇ…負の力だ。これが…魔剣正宗か。」
そして、深呼吸すると立ち上がる。
「こんな事で弱音を吐いてたらダメだな。よし、大丈夫!」
そんな様子に3人は顔を見合わせ笑うと、まだまだ先に続く道を進み始めた。
───最深部…。
『…見事だ…そなた達の光に力を貸そう…。我を手に取るが良い…!』
高台の崖の上で最後の武器の守護者を倒し、ロトは目の前に浮く剣を手に取る。
金色の刀身を持つ神々の黄昏の異名を持つその魔剣は静かに光を放つ。
そこで不意に、奥の暗闇から拍手が響く。
「誰だ!?」
アムルが身構えると暗闇の中に漆黒の魔道士が浮かび上がる。
「流石は光の戦士…あのガーディアンを従わせるとは。」
その魔道士が放つ魔力にロトは無意識に胸を抑えた。その首筋には冷たい汗が流れる。
その様子に魔道士は不敵な笑みを浮かべた。
「…良く生き延びたものだ。あれだけの傷を負いながら。裏切り者の助けもあったからだろうが…。」
「ロト、大丈夫?」
ロトの様子にユリディナが声をかけると、魔道士は笑い声を上げた。
「傷が痛むか?疼くのか?そうだろうな、お前を貫いたあの虚無は私のものだからな!」
「…貴様!!」
アムルが腰を落とすと魔道士はふわりと浮かび上がり、奥にあった巨大な紫水晶の上へ着地する。
「ふふ…そう怒るな。今回は戦いに来た訳では無い。ちょっとしたゲームをしようかと思ってね。」
魔道士がそう言って紫水晶に魔力を注ぎ込む。すると、それは闇の鎖と化し水晶を締め上げ始めた。
「…まさか…その水晶は…。」
ユリアスが眉をひそめると、魔道士は笑みを漏らす。
「…気が付いたようだな。そう、これはエウレカとシルクスを繋ぐ魔力源だ。
これが割れれば門は消える。エウレカはシルクスより切り離される。
さて、その前にお前達が塔へ戻って来れるのか…見物させていただこう。」
そう言って魔道士が姿を消したと同時にエウレカを不気味な振動が襲う。
「エウレカの鍵が…!」
ユリディナの声に3人は振り返る。すると、そこにはヒビが入り始めたエウレカの鍵があった。
「ちっ…脱出ゲームか…。急ぐぞ、ここに閉じ込められる訳にはいかん。」
ユリアスの言葉に振動が続く高台を4人は門へと走り出した。
振動の響く中、4人は来た道を駆け戻る。その後ろからまるで闇から沸き出る様に妖魔の群れが追いかけてくる。
ロトとアムルはユリアスとユリディナを先に行かせ、追いついて来た妖魔を倒し後を追う。
その途中で飛び掛ってきた妖魔をアムルが切り裂いた時、その背後に隠れて居た妖魔が放った雷がアムルを襲い彼は衝撃で壁に叩きつけられた。
「アムル!」
ロトがその妖魔を倒しアムルに駆け寄ると同時に、ユリアスがバハムートを召喚し竜王の放ったブレスが迫った妖魔を吹き飛ばす。
「…こんな程度で…。」
「ちゃんと回復する暇が無いな…。」
まだ奥から来る妖魔の気配と続く振動にユリアスは呟くと、ロトは意を決し立ち上がる。
「ここは私が抑える。皆は先に行ってくれ。」
「無理よ!1人でなんて…。」
それに驚きユリディナが声を上げるとロトは笑って見せる。
「大丈夫、心配するな。ラグナロクが力を貸してくれている。必ず追いつくから。」
その姿にユリディナは俯きロトはユリアスを見て黙って頷く。それに3人は先へと進んでいった。
3人が階段の先に進み姿が見えなくなった所でロトの隣に光が弾け光竜が姿を見せる。
『…無茶をする…。胸の傷が痛むのだろう?どうせここは異空に切り離される。
ならば多少、道を壊してしまっても問題ないと思う。とにかく、君も階段まで戻るんだ。』
その言葉にロトは苦笑し息を吐くと後ろに警戒しつつ階段を駆け上る。
そこで光竜は大きく息を吸い込むと階段の天井を目掛けブレスを放った。
先に進んだ3人は後ろから響く先程から続く振動とは別な揺れに驚いて振り返った。
「一体…何が!?」
戻ろうとするアムルを引きとめ、ユリアスは2人を先へ促す。
“…光の波動…光竜か?”
暫し後ろを見つめユリアスは2人の後を追い走り出した。
その振動に気が付いた者は3人以外にも存在した。
塔の最上階でその中心に立つ白銀の髪をした男は、シルクスの遥か地下から響く振動に顔を上げた。
「…この力の気配は…まさか…?」
小さく呟き手に持つ魔杖に意識を集中させた。
周囲を土煙が舞う中、ロトは階段から登ってきた妖魔を切り伏せ盾で弾き飛ばす。
とは言え、その数は先程までに比べれば遥かに少なく土煙が治まる頃に最後の妖魔が地面に倒れる。
そこで改めて奥を目を向けたロトが見たのは完全に天上が崩れ、埋った階段だった。
肩で息をしつつ呆然とその様子を見つめていると、ロトを淡い光が包み込み同時に胸の痛みも和らいでくる。
『その場凌ぎだけど…ここを抜けるくらいは大丈夫だと思う。急いだ方が良い。』
「…うん、ありがとう。」
光竜の言葉にロトは頷くと、剣を納め出口に向かい走り出した。
───シルクスの塔・エウレカの入口で鏡にヒビが走る。
そこで、3人が門を抜けて出てくるとユリアスはアムルを座らせヒビの走る鏡を振り返る。
見る間にヒビが鏡全体に走り大きな音を立て亀裂が走った。
…エウレカの入口にあった門が次第に小さくなって行き、やがて完全に消滅する。ロトが辿りついたのはその時だった。
「…間に…合わなかった…?」
肩で息をしつつ行き止まりの岩肌に手を当てる。
「…閉じ込め…られたのか…。」
そして、その場に座り込んだ。光竜が慌ててその肩に舞い降りると、不意に周囲に風が吹く。
「風…?」
『…心配しなくて良いと…安心しろと言ってる…。』
光竜が風に乗って聞こえた声を伝えると、ロトは壁にもたれかかる。
「そう…なのか?…ごめん…少し休ませて…。」
そう言って、ロトは目を閉じた。
『…無理するから…。』
気を失ったロトに光竜が溜息をついた時だった。奥から響いてきた足音と感じた魔力に光竜は慌てて姿を隠す。
“まさか…あの方は…!な…何故、こんな所に?!”
足音の主はロトの目の前で止まると、壁にもたれかかり気を失ったロトを見下ろしていた。
床に落ちるエウレカへの入口の鏡の欠片をユリアスは拾い上げる。
「…今ならば、まだ残った魔力を追えば戻れるか…。」
その言葉にアムルとユリディナはユリアスを見る。
「ここには魔物は入って来れんようだ。お前達は…。」
そこまで言った時、ユリアスは鏡の欠片が伝える魔力に欠片を手放し距離を開けた。
不意に鏡の前に一振りの杖が浮かび上がりゆっくりと一回転し、一筋の光が走ると再び門が開く。
「…やはり…お前の導きか…土の守護者よ。」
「貴様は…ザンデ…!!」
門から姿を見せた白銀の髪の男にユリアスが身構えると、アムルとユリディナは驚いて男を見た。
「今は戦うつもりは無い。」
そう言って手を払うとユリアスの前にロトが転送され、ユリアスは慌ててロトを抱きとめた。
特に目だった外傷も無く気を失っているだけのロトの姿に安堵したユリアスにザンデは静かに笑みを漏らす。
「安心しろ。私は意識の無い者を痛めつける趣味は持ち合わせておらん。」
「…どう言うつもりだ?」
ユリアスが問いかけるとザンデは背を向けた。
「言っただろう、今は我が聖魔獣達を屠った光の戦士とやらに挨拶に来たまで。とは言え、最上階に辿り着くまでに妖魔に倒されても面白くないのでな。
無事に最上階まで辿り着く事が出来たならば相手をしてやろう。」
その言葉を残しザンデは4人の前から姿を消した。
静寂の包み込む中、ロトが小さな呻き声を上げる。ユリアスは静かにロトを横にさせると、ロトは目を覚ました。
「…大丈夫か?」
ユリアスが声をかけるとロトは黙って頷く。そこで心配そうに後ろから見ていたアムルの顔にロトは笑って見せる。
「…酷い顔してるぞ…アムル。」
「……ごめん…また、オレのせいで…お前に無理させて…。」
するとロトは身体を起こし、小さく息を吐く。
「気にするなよ。」
そう言って、アムルの頭を軽く叩いた。
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