エンタープライズを東に進路を取り暫く海上を飛んでいくと、新たな大陸が見え城壁に囲まれた大きな町並みが見えてくる。
「…ここがサロニア…。」
眼下に流れる町並みにその大きさに驚いていた時、突如、振動が船を襲う。
「な…なんだ!?」
警告音が鳴り響く中、アムルは舵をロトに任せ振動のあった船尾を確認しに走る。
すると、そこには船体から上がる黒煙が見えていた。
「…どうやら、大砲の流れ弾にでも当たったようだな…。」
「落ち着いてる場合じゃない!くそ、舵が効かない!!」
外を見て普段と変わりなく呟くユリアスの様子に、ロトは焦りつつも舵を握る。
そこへアムルが戻ってくると操船を代わり計器を色々いじり始めると、モニターに様々な数値が表示され始めた。
「…エンジン出力低下…落ちる!」
アムルは舌打ちし、さらに計器のスイッチを入れ始める。
「ユリアス!皆を連れて先に地上へ転移してくれ!」
その言葉にロトは驚いてアムルを見た。
「お前はどうするつもりだ!?」
「自動操縦に切り替えてから行く!このままだと街に落ちちまう。それにユリアスも4人+チョコボは一緒には無理だろ。それこそ危険だ。」
振り返らずに設定を続けるアムルの姿にユリアスは帽子を深く被る。
「…仕方あるまいな、行くぞ。アムル…無茶はするなよ。」
その言葉にアムルは一瞬笑って見せ、すぐに真顔になると舵を握り高度を安定させる。
3人とナークが姿を消した後、モニターに自動操縦完了の文字が流れた。
それを確認しアムルは甲板に駆け出すと、荷揚げに使う滑車に固定されたロープを腕に巻きつけ下を見る。そこには少し先に町並みから外れた所に森が見えた。
「…なんとかなるか。」
呟き飛空挺から飛び降りる。滑車に巻かれていたロープが伸びきり森が真下に迫り木々の枝が掠り始まった時、急激に高度が落ちる。
そこでアムルは咄嗟にロープをナイフで切り森に落ち、エンタープライズは城壁を越えた付近で大きな爆発を起こしそのまま山へと墜落した。
「アムル…!!」
それを地上から見ていた3人はアムルが落ちた森へ走り出した。
「…い…痛…っ…泉があったのか…。」
森の中…アムルは小さな泉から這い上がり、そこで気を失い倒れこんだ。
「アムル!何処だ!!」
森にやってきた3人は手分けをしてアムルの姿を探していた。
アムルの名を呼び奥へ進んできたロトは、不意に目の前に現れた影に足を止める。
そこには武装した飛竜が居り、その足元にはアムルの姿があった。
「…ドラゴン…?」
思わず立ち尽くしていると飛竜は彼に近づいてくる。そして、ロトの顔を覗き込むとおもむろに頬を舐めた。
「え…?ちょ、ちょっと…?」
その行動にロトは意表を突かれ慌てて飛竜の顔を抑える。
『…飛竜…回復の力を持つ子だね。まだ、歳は若いみたいだけど…。』
「…飼育されてたのかな…若いと言ってもこんなに人懐こいなんて…。」
何とか舐めようとする飛竜を抑え、光竜の声にロトは溜息をつきつつ飛竜の顔を撫でた。
『…シグムント…。この子の名…かな?そう呼ばれていたらしい。』
「シグムントか。良い名前だな。」
ロトが笑い顔を軽く叩くと、シグムントは嬉しそうに喉を鳴らした。
そして、ロトはアムルに近づき抱き起こすと声をかける。すると、アムルは目を覚まし…しかし、すぐに顔を顰めた。
「…肋骨2・3本やったかな…。」
アムルがそう言って苦笑するとシグムントがロトの後ろから顔を出し、アムルは驚いて身構える。
するとシグムントは小さく鳴き、同時にアムルを淡い光が包み込んだ。
「…?痛みが…無くなった…?」
「回復が得意な種類みたいだ。お前を気に入ったらしいな。」
ロトが笑うとシグムントはアムルの顔を舐めた。そこで、アムルを探すユリアスの声が聞こえ2人は立ち上がる。
「助けてくれて、ありがとな。」
アムルはそう言ってシグムントを撫でて手を振ると、去っていく2人を見つめシグムントは寂しそうに声を上げた。
───城下町にある一軒の酒場。そこで1人の少年がガラの悪い男に取り囲まれていた。
「おい、皆聞けよ。こいつ、自分の事を王子様だって言ってるぜ。」
大声で笑う酔っ払いに囲まれ金髪の端正な顔立ちをした少年は言い返そうとするが、その声は男達の笑い声にかき消される。
店にいる他の客は遠巻きに見て見ぬ振りをしており、少年は男達に押され尻餅を付く。その時だった。
「おい、あんたら…子供相手に大人気ないんじゃないのか?」
「何だと!?」
後ろから声をかけられ男達が振り返ると、そこには黒い鎧をまとった剣士が立って居た。
相手が1人だと男達は気が大きくなったのか身構える。その姿に剣士は面白そうに笑みを見せる。
「へぇ…オレとやるってのか?言っとくが…オレ、喧嘩なら強いよ?」
「うるせぇ!」
剣士の挑発に男達は頭に血が上り、怒声を上げて剣士に殴りかかった。
その頃、ロトはアムルの姿を探して城下町を歩き回っていた。少し目を離した隙に居なくなってしまったのだ。
「ったく…アムルのヤツ、何処に行ったんだ…。目を離すと直ぐ…。」
そこで、少し先の酒場で人だかりが出来て居る事に気が付いた。
「喧嘩だ!酒場で喧嘩してるぜ!」
「滅茶苦茶強いぞ、あの若いの!!」
喧嘩見物で盛り上がっている街の人の言葉にロトは少し嫌な予感が走る。
「ふぇー…この辺じゃ見かけないが、旅の人かね?」
「んー、いいねぇ。黒衣の剣士ってか?」
人だかりをかき分けて酒場の入口へ近づいたロトは、そこで男を投げ飛ばしているアムルの姿に顔に手を当て溜息をついた。
床に転がる男達にアムルは腰に手をあて首を傾げる。
「何だ、つまらないな。もう仕舞いなのか?」
「…何やってるんだ、お前は!」
後ろから聞こえた声にアムルは驚いて振り返り、そこに立っているロトの姿に苦笑する。
「お前は目を離すとすぐ…。」
そこでロトの背後から、アムルに投げ飛ばされた男がナイフを抜いて切りかかって来た。
ロトはそれを軽くかわし男の腕を捻り上げるとナイフを叩き落とす。
「いってててて!!」
「…正当防衛だ。まだやるか?次は腕を折るぞ。」
静かに呟きロトが睨むと、他の男達は酒場から逃げて行きロトは捻りあげていた男を放す。
「あんたも。もう止めな?」
そう言ってロトが微笑むと、男は青ざめ転がるように逃げていった。
「ロト…お前が言うと洒落にならん…。」
アムルがその様子に苦笑しすると、ロトは肩をすくめて見せた。
最初に男達に絡まれて居た少年は、そんな2人の姿を唖然として見つめていた。
黒い鎧に背負った珍しい形状の細長い剣。それにまるで血の色を思わせるような真紅のマント…。
幼い頃、御伽噺のように乳母が聞かせてくれた魔剣士と騎士にそっくりな恰好。
そこでアムルはじっと見つめてくる少年の様子に気が付き、膝を付くと少年に声をかける。
「どうした?どこか怪我でもしたか?」
アムルが笑うと、少年は我に返り慌てて首をふる。
「ここは君の様な年の子が来る所ではないよ。」
酒場の主人に声をかけ謝っていたロトは戻って来ると心配げに声をかける。
そこでアムルは少年を立ち上がらせ埃を叩く。
「あ、こんな所に居たー。もう!」
「まったく…何をしているのかと思えば…。」
その声に2人が振り返ると、入口からユリアスとユリディナが入って来る所だった。
それにアムルも立ち上がり2人に謝る。そんな4人の姿に少年は立ち尽くし考える。
こんな魔物が増えた時期に旅をする人はそう居る筈が無い。4人の旅人…
そこで少年はアムルのサーコートの裾を握り締め、アムルはそれに気が付き振り向いた。
「何だ?どうした?」
アムルは再び視線を合わせるように腰を下ろすと、少年は顔を上げ懇願するように4人を見た。
「お願いです!どうか…私に力を貸してください!!」
その言葉に4人は驚いて少年を見た。
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