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古代人の村


 生きている森を出てアーガスへ立ち寄った4人は、アーガス王から古代人が造ったと伝わり永久機関とも呼ばれる時の歯車を譲り受けた。
それをカナーンのシドに渡すように言われ、アーガスを後にした4人はカナーンへと戻ってくる。
4人が戻ってくるのを待っていたシドはすぐにエンタープライズを飛空挺へ変形出来る様に改造を施してくれた。改造を終えたその日、シドの家に泊まって行くようにと勧められ、その言葉に甘える事に。
その夜の事…
シドは上機嫌でアムルに絡み酒を勧め、それをシドの奥さん…ヒルダが止めに入る。
それを苦笑しつつ見ていたロトだったが少し席を外して外へ出た。
「…はー…シドもお酒好きだなぁ…。」
 ロト自身は飲んでは居なかったが、場の雰囲気に酔ってしまったのか…少しボーっとする頭を覚まそうとカナーンの街中を流れる水路沿いに町外れにある池へとやって来た。
水面に映る月に空を見上げ大きく伸びをした時だった。ふと、チョコボの足音が耳に入る。
こんな夜中に誰が…?疑問に首を傾げた時、木の陰からチョコボが姿を見せ乗っていた人影は驚いてチョコボを止めた。
「…あ…。」
 その人影がロトを見て声を上げた時、雲の合間から指した月明かりがその人影の姿を照らし出す。
「…サ…サラ姫!?」
 その顔にロトは驚いて声を上げると、サラはチョコボから飛び降りロトに抱きついた。
「サラ姫…どうしたんですか?こんな時間に、こんな所まで…しかも1人で!」
「貴方がカナーンに戻っていると聞いて…どうしても会いたくて…。」
 自分に抱きつき泣きながらも答えたサラの姿に、ロトは動揺しつつも落ち着かせるようにそっと抱きしめ背中を叩く。
一頻り泣き落ち着いたサラはロトから離れると顔を上げ笑みを見せた。
「また一段と戦士の顔になりましたね。今日ここに来たのは、これを渡したかったのです。」
 そう言ってサラはチョコボの後ろに乗せていた箱から白銀の輝きを放つサークレットを取り出した。ロトが不思議に思い首を傾げると、サラはそれをロトに差し出す。
「サスーンに代々伝わってきた、騎士に与えられる物です。」
「そ…そんな大切な物…私は受け取れない!!」
 驚いてロトが首を振るとサラは引かずにロトに近づく。
「良いのよ!貴方は光の戦士だもの。私を助けてくれたもの!」
「しかし…そんな事だけでは…。」
 その後、暫く押し問答を続けるが最終的にロトは押し切られる形で受け取る事になった。
苦笑しつつ、ロトが膝を付き頭を垂れるとサラはサークレットをロト額に被せる。
するとロトはクリスタルから受け取った騎士の記憶を模し、剣を抜きサラに預けると彼女はそれを受け取りロトの肩へと当てた。
「我が剣と風の守護者の名の元に…使命を果たし再び貴女の元へ戻る事を改めて誓いましょう。」
 そして、ロトは剣先に口付けをしサラに微笑んだ。

翌朝…予想通りと言うべきか…シドとアムルは二日酔いになりベッドで寝込み、ヒルダとユリディナは二人の看病をしていた。
「…きっと、城では大騒ぎになっているかもしれんな。」
 昨日、カナーンで一夜を過ごしたサラの姿にユリアスは溜息をつき、その姿にサラは恐縮し謝る。
「ま…今日はあのバカの様子では出発は無理だろうから…ロト、責任をもって皇女をサスーンまで送ってくるのだぞ。」
「分かってるよ。」
 ロトはチョコボの手綱を引き苦笑した。
「…まあ、騎士の誓いを立てたのであれば問題無かろうとは思うがな。」
「!?」
 ポツリと呟いたユリアスの言葉にロトが驚いて振り返ると、ユリアスは呆れた顔をする。
「夜中にあれだけ騒いで居れば聞こえるわ。」
 その答えにロトは顔に手をあて肩を落とし、サラは思わず笑いをもらした。
数時間後、チョコボを飛ばし2人はサスーンの城門が見える所までやって来る。
「…ここで大丈夫です。一緒に戻ってゴタゴタに巻き込んだら貴方の旅を邪魔する事になってしまうから。」
 そう言われロトは乗ってきたナークの背を降り、サラを見上げる。
「今度は…使命を果たすまでは戻って来れないと思います。でも、また勝手に城を抜け出したりしないで下さい。…もし、貴女の身に何かあったら、私は誓いを守れなくなる…。」
「分かっています。…決して無理はしないで…無事、帰って来て下さい。」
 ロトの言葉にサラは頷き名残惜しそうにロトの手を握った後、城へと帰って行った。
サスーン城内は特に大きな騒ぎになっておらずサラは拍子抜けをする。
途中、すれ違った侍女達も特に変わった様子も無く、普通に挨拶をして行く。
その様子に特に大事にする必要も無いと判断し、サラは自室に戻ると扉を閉めて溜息をついた。
そして、ネルブの谷が見える南側の窓から外を見た時だった。
森の途中にある木々が途切れた小高い丘にこちらを見るロトの姿を見つける。
ロトも窓からサラが姿を見せたのを確認すると、森の中へと姿を消した。

 そして、次の日… 
カナーンを飛び立ったエンタープライズは、ユリアスの指示で大陸の南西に向かい進路を取っていた。
「ユリアス、どこに行こうとしてるんだ?」
「…古代人の村だ。」
 舵を取りつつアムルが問いかけると、ユリアスは短く答える。
「古代人の村…?」
 ロトが問い返すと、ユリアスは小さく頷く。
「そうだ。飛空挺の永久機関やオーエンの塔を作った人々…古代人の末裔が住む村だ。」
「でも、そこに何の用が…?」
 アムルが再び問いけるとユリアスは窓際に歩み寄り外を見つめる。
「…浮遊大陸を出る前に、お前達に知っておいて欲しい事があるんだ。」
 何時もと違うユリアスの様子に3人は顔を見合わせた。

 近くの海岸沿いにエンタープライズを停泊させ、4人は切り立った崖の傍にある古代人の村へやって来た。と、そこの入口にある樹の隣でユリアスは立ち止まる。
「私はここで待っている。お前達だけで行って来い。」
「…どうしたんだよ?急に…。」
 アムルが声をかけるがユリアスは黙って樹の根元に腰を下ろす。
「兄様…?」
「…アムル、ユリディナ、行ってこよう。」
 戸惑う2人に声をかけロトが村の中へと歩き出し、残る2人もユリアスの様子を気にかけつつも後を追った。
「何か…変だったな、ユリアス…。」
「うん。あんな兄様見るの初めてかも…。」
 時々振り返りアムルが呟くと、ユリディナも心配そうに振り返る。
「ユリアスも1人になりたい時くらいあるさ。ウルに居た頃もよく一人で草原の大樹の下に居たし…旅に出てからそんな時間は取れなかったしね。」
 ロトが2人を安心させるように声をかけた時、一軒の家から女性が姿を見せた。
「あら…旅の人?いらっしゃい。こんな辺境の村に来るなんて…酔狂な人達ね。」
 3人の姿に女性は笑って声をかけて来る。
「…普通の村だよな。本当に古代人の村なのか?」
 アムルが村を見回し呟くと女性の顔から笑みが消えた。それに、ロトは慌てて言葉を続ける。
「もう1人連れが居るんですが…彼に言われたんです。知っておいて欲しい事があるから話を聞いて来いと…。」
 すると女性はユリアスの居場所を聞いてきて、ロトが入口の大木を指差すとそこに座るユリアスの姿に安堵した表情を見せた。
「…ユリアスの連れだったのね。じゃあ…彼が言ってた子供って…あなた達だったのね。」
 女性の言葉に3人は顔を見合わせると、女性は笑って3人を家へ招き入れた。
「彼は時々、この村にも来ていたのよ。珍しい魔法の品を扱う工房もあるからね。」
 3人に紅茶を出しつつ女性は話を続ける。
「あなた達に知っておいて欲しい事…それは、光の氾濫の事だと思うわ。」
「光の氾濫?」
 ユリディナが問いかけると女性は目を伏せる。
「そう…ずっと昔…古代人が引き起こした恐ろしい災い…。」

 今から1000年程前…。
当時の古代人達は高度な文明を誇り、飛空挺やオーエンの塔…そして浮遊大陸を生み出した。
その繁栄はクリスタルより取り出した光の力を使う事によりもたらされた。
しかし、ある時…光は暴走し世界を破壊し始めた。人間が扱うには大きすぎる力だったのだ。
制御しきれず溢れる光の力…全てが終わりだと思われた時、どこからか4人の戦士が現れ、闇の力を使い光の氾濫を食い止めた。
彼らは何者なのか…光が元の穏やかな表情を見せた頃、4人の戦士の姿はどこにも見当たらなかった。

「4人の戦士…。」
 ユリディナが呟くと女性は頷く。
「そう。彼らは闇の力を持っていた。…光と闇は心を持っている。そして、片方に何かが起こるともう片方は4人の者を選び出し自らの力を託すと言うわ。
光の氾濫から世界を救った戦士達もそうだった。私達は彼らを闇の4戦士と呼んでいるの。そして今、あなた達が光に選ばれた。その力、間違った使い方をしてはダメよ?それと闇を憎んではいけない。
この世界は光と闇の調和によって成り立っているのだから。」
 3人は女性に礼を言って家を出た。それから一刻ほど村を回って歩き古代人に伝わる伝承等を教えて貰う。村の入口に向かい歩いて行く途中、ロトは崖の下に広がる雲海に足を止める。
「闇を憎むな…か。」
 ぽつりと呟き流れる雲を見つめると、その隣でアムルが溜息をつく。
「ユリアスが知っておいて欲しい事って、その事だったのか…。」
「光と闇の調和…崩れたらどうなるのかな…?」
 ユリディナの言葉に3人は沈黙する。今、光が力を失い闇があふれ出している。調和が戻る事無く闇が世界を覆い尽くしたら?
そのまま無言で戻って来た3人の気配に樹の下で瞑想をしていたユリアスは顔を上げた。
「戻って来たか。ちゃんと話は聞いてきたか?」
 問いかけられロトは頷く。
「…闇を憎んではいけない。光と闇の調和でこの世界は成り立っている…。」
「そう言う事だ。それでは行こうか。」
 ロトの返事にユリアスは満足そうに頷くと立ち上がった。そこで、歩き出したユリアスにアムルが声をかける。
「なあ、ユリアス…もし、光と闇のバランスが崩れたらどうなるんだ?」
 それにユリアスは立ち止まり帽子を深く被り直す。
「…消える。全てな。」
 短く答えたユリアスの姿に3人は言葉を無くし立ち尽くす。そんな3人に気がつきユリアスは苦笑し溜息をついた。
「心配するな。今は闇が世界を覆ってはいるが完全に光が失われた訳では無い。私たちが光に選ばれたのがその証。まだ…闇の氾濫は勢い付いていない。まだ間に合う。」
「…そうだな…私達が止めないと。デッシュが言ってた…これは誰が変わることも出来ない私達の運命なんだ。」
 ロトが呟くと、アムルとユリディナも頷く。
それにユリアスは笑みを見せ4人は古代人の村を後にした。

 エンタープライズに戻り、アムルは計器を確認し舵を握る。
「何処に向かえばいい?ユリアス。」
「…雲の向こうへ。そこに…母なる大地がある。」
 ユリアスの答えにアムルは頷きロトを見る。するとロトも黙って頷きアムルはエンタープライズを雲海へと進路を取った。
古代人の村を越えエンタープライズは高度を下げ雲の中へと突入する。
異変はすぐに4人に襲い掛かった。
「なんだ…?!まるで力を吸い取られるような…。」
 舵を握りつつアムルが呻く。
座り込みナークに抱きつくユリディナを気にかけつつもロトも膝をついた。
そんな中、ユリアスは黙って進行方向を見つめ続ける。
「気をしっかり持て!雲を抜ければ…。」
 ロトの言葉にアムルは頷き飛空挺の速度を上げた。やがてエンタープライズは雲を抜け、先程までの纏わりつくような不快感は消える。
高度を安定させ落ち着いた所でアムルは改めて外へ目を向けた。
「なん…だ…?これ…。」
 唖然と呟いた声にロトとユリディナも立ち上がり窓の外を見た。
「…大地の姿が無い…?」
 計器の地図を写すモニターを操作していたユリアスがポツリと呟いた。
「そうか…そう言う事なのか…。」
 呆然と座り込んだユリアスの姿にロトは慌てて駆け寄った。
「ユリアス、少し休んだ方がいい。無理しないで。」
 そして、肩を貸し立ち上がらせるとベッドのある船室へと連れて行く。
その後ろを慌てて付いていくユリディナを見送りつつ、アムルはユリアスが表示させていた地図を見た。表示されていたのは海を表す薄い青。自動操縦に切り替え窓へ近づき外を見る。
……そこは見渡す限りの大海原。
波一つ立たない海面に浮遊大陸を取り囲む雲の合間から指す日の光が僅かに反射している景色だった。

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