薄暗い遺跡の一室…。
その部屋の中心に仄かに輝きを宿す巨大な水晶がある。
…土のクリスタル…
この世界を支えると言われる四大元素の1つを司るそれの前に一つの人影が姿を見せた。黒いローブを身に纏い、一振りの杖を手にしている。
「土のクリスタルよ。我が望みの為…その力、使わせてもらう。」
そう呟き、その人物は大きく手を掲げた。
風が吹き荒れる。まるで泣き叫ぶかのように。
高くそびえる山々に囲まれたダルグ大陸。
その中央の深い森に囲まれ佇む館。
吹き荒れる風に誘われる様に一人の男が館の自室よりテラスに出ると、風の音に耳を傾け弾かれる様に空を見上げる。
「風が…泣いている…。まさか…!?」
…その直後…世界を大地震が襲った。
『すべての闇を振り払い…クリスタルに輝きを…』
そのグルガン族の男は静かに語った…。
この大地震さえも単なる予兆にすぎぬ、と。
世界の光の源であるクリスタルを地中深くに引きずり込み、
魔物を生み出した大きな震えさえも、
これから始まる事に比べれば些細なものである。
それは、とてつもなく大きく、深く、暗く…
…そして、悲しい…。
だが、希望は失われてはいない。
風の町ウル。
あの大地震の被害を大して受けなかったこの場所は、「風のクリスタル」を祭った風の神殿の近くだったからだと言われている。
それでも大地震以降、魔物の姿が増え始めていた。
事の始まりは、ある日の昼下がり…
優しい風が吹き抜ける村はずれ、草原に1本だけ葉を広げる巨木を目指して青年が駆けていく。そして、巨木の下に腰掛け本を開いている銀髪のエルフを見つけ大きく手を振った。
「ユリアス!」
名を呼ばれ銀髪のエルフ…ユリアスは顔を上げる。
「アムルか。何の用だ?」
そこで駆け寄ってきた青年・アムルの顔にユリアスは小さくため息をついた。
(また…良からぬ事を考えているな…?)
アムルはまるで宝物を見つけた様な笑顔を見せる。大抵、この時はとんでもない事を考えている時だ。
ユリアスの心配を他所に、息を整え一息ついたアムルは満面の笑みを浮かべて口を開く。
「祭壇の洞窟に行こうぜ!」
「は?」
草原に風が吹き抜けて行く…。
『4つの魂が光の啓示を受けるであろう。』
村の裏口…かつて風のクリスタルへの参道として使われていた道の入り口に2人の男女が立っている。
「連れて来たぞー。」
その声の方向に目を向け、アムルに続いて姿を見せたユリアスに青年は大きくため息をつく。
「ユリアスなら絶対反対してくれると思ったのに…。」
「…私も、かなり不本意なのだがな。」
青年の言葉にユリアスは不機嫌そうに答える。その様子に少女はクスクスを笑いを漏らす。
「何言っても2人の負けさ。ほら、早く行こうぜ。」
すでに前を歩き始めたアムルと少女の姿に、2人は軽く首を振って歩きだした。
『…そこから、すべてが始まり…』
今はすっかり荒れ果てた道の先に、ぽっかりと洞窟が口を開けている。
祭壇の洞窟…
かつてこの場所には天にそびえるクリスタルの塔があったと言う。
それが大地震の後に神殿諸共姿を消し、そこに出来た洞窟からウルの人々はそう呼んだ。
洞窟にやってきた4人はランタンを灯し中へと進む。
「ユリディナ、足元に気をつけろ。」
アムルを追いかけようと慌てて進む少女の姿にユリアスは声をかける。
「まったく…誰に似たんだか…。ロト、危険は無いとは言い切れん。油断はするのではないぞ。」
ユリアスは先を歩く2人の姿に諦めに似たため息をもらし、最後に洞窟に下りてきた青年を見る。2振りの剣を腰に下げた青年・ロトはそんな視線に肩をすくめて見せると洞窟を見回した。
「トパパ爺達と一緒に面倒見てくれたのはユリアスだろ?放任主義だったからユリディナは好奇心旺盛なんじゃないかな。」
悪戯っぽい笑みを見せたロトにユリアスは苦笑する。
そんな後ろ2人の心配を知らず、アムルとユリディナはどんどん先へと進む。
村の皆が魔物を恐れ近づかないこの場所は、まったくの未知の世界。軽い気持ちで思いついた祭壇の洞窟探検。…ちょっとした度胸試しのつもりだった。
暫く進んだ所で目の前が急にひらける。と、そこで小さい振動が洞窟を揺らした。
大した揺れでも無く、すぐに収まった事に安堵したのも束の間、足元に亀裂が走る。
それに気が付いた時にはすでに遅く、地割れが4人を飲み込んだ。
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